文化財を知りたい
文化財とは…
文化財は、日本の長い歴史の中で生まれ、育まれ、今日の世代に守り伝えられてきたものであり、一度失ってしまえば二度とよみがえることのない、貴重な国民的財産です。
これらは、日本の歴史、文化等の正しい理解のために欠くことのできないものであると同時に、 将来の文化向上発展の基礎をなすものです。
そのため、国では文化財保護法、県、市町村などにおいてはそれぞれ文化財保護条例な どを 定め、文化財の保護を図っています。
文化財には、大きく分けて次のような種類があります。
有形文化財 | 建造物、美術工芸品 (絵画、彫刻、工芸品、書跡、典跡、古文書、考古資料、歴史資料) |
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民俗文化財 | 有形の民俗文化財 (無形の民俗文化財に用いられる衣服、器具、家屋等) |
無形の民俗文化財 (民俗芸能や衣食住、生業、信仰、年中行事等に関する風俗習慣) |
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無形文化財 | 演劇、音楽、工芸技術等 |
記念物 | 遺跡(貝塚、古墳、都城跡、旧宅等) |
名勝地(庭園、橋梁、渓谷、海浜、山岳等) | |
動物、植物、地質鉱物などの天然記念物 |
※この他、宿場町、城下町、農漁村などの伝統的建造物群、土地に埋蔵されている埋蔵文化財、 文化財の保存・修復に欠くことのできない伝統的な技術・技能である文化財保存技術などがあります。
文化財保護のための制度
大切な文化財を守り伝えていくためには、文化財であることを広く周知し、適切な保護・ 管理措置をとる必要があります。 そのため、国・県・市が、指定・認定・登録などの制度 を定めています。

市内のおもな指定文化財等
宇都宮市内にある、国・県・市指定、および市認定、国登録の文化財は下表のとおりです。(平成24年4月1日現在)
区分 | 種別 | 指定別 | 合計 | |||
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国 | 県 | 市 | ||||
指定文化財 | 有形文化財 | 建造物 | 2 | 1 | 9 | 12 |
美術工芸品(絵画) | 0 | 33 | 114 | 147 | ||
美術工芸品(彫刻) | 2 | 7 | 30 | 39 | ||
美術工芸品(工芸品) | 3 | 54 | 28 | 85 | ||
美術工芸品(書蹟) | 1 | 3 | 5 | 9 | ||
美術工芸品(典籍) | 0 | 0 | 1 | 1 | ||
美術工芸品(古文書) | 0 | 0 | 2 | 2 | ||
考古資料 | 3 | 6 | 19 | 28 | ||
歴史資料 | 0 | 0 | 27 | 27 | ||
無形文化財 | 芸能 | 0 | 0 | 10 | 10 | |
民俗文化財 | 有形 | 1 | 2 | 19 | 22 | |
無形 | 0 | 1 | 2 | 3 | ||
記念物 | 史跡 | 4 | 7 | 21 | 32 | |
名勝 | 1 | 0 | 0 | 1 | ||
天然記念物 | 0 | 7 | 31 | 38 | ||
(市)認定建造物 | 有形文化財(建造物) | 0 | 0 | 4 | 4 | |
(国)登録文化財 | 有形文化財 | 0 | 0 | 10 | 10 | |
合計 | 34 | 121 | 322 | 477 |
大切な文化財を守り、正しく活用し、次の世代に伝えていくことは、現代に生きる私たちの責務です。
そのため、文化財所有者はもとより、地域や市民団体、学校、行政が、さまざまな場面で文化財保護の取り組みを行っています。
宇都宮市においても、文化財保存活動団体や自治会による保護活動、身近な文化財を学 習や奉仕活動に取り上げる学校が増えてきています。
また、文化財を核として、地域住民を巻き込んだ新しいコミュニティー作りに取り組む 事例も見られるようになってきました。
1.文化財保存活動団体の取り組み
地域の文化財を守り、将来に継承するための活動を行っている市民団体が「文化財保存活動団体」です。 これらの団体は、有志により結成されているもの、自治会を単位に構成されているもの、学校の児童会やPTAが元になっているものなどさまざまです。
種類 | 団体名 |
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有形文化財建造物 | 旧篠原家住宅保存会 |
有形の民俗文化財 | 徳次郎智賀都神社夏祭付祭屋台保存会 石那田八坂神社天王祭付祭屋台保存会 石那田八坂神社天王祭猿田彦面装束一式保存会 伝馬町屋台保存会 本郷陸会 蓬菜町自治会 |
無形文化財 | 宇都宮鳶木遣り保存会 関堀の獅子舞保存会 飯山の獅子舞保存会 上横倉の獅子舞保存会 宗円獅子舞保存会 篠井の金堀唄保存会 瓦谷の神楽保存会 堀米の田楽舞保存会 二荒山神社の神楽保存会 八坂神社の神楽保存会 |
記念物史跡 | 西山文化財愛護会 塚山古墳群愛護会 飛山城跡愛護会 瓦塚古墳群愛護会 長岡百穴愛護会 竹下文化財愛護会 おしどり塚愛護会 谷口山古墳愛護会 稲荷古墳群愛護会 下栗大塚古墳愛護会 樋爪氏の墓愛護会 北山古墳群愛護会 蒲生君平勅旌碑愛護会 宇都宮城主戸田家の墓所愛護会 |
記念物天然記念物 | 古賀志の孝子桜愛護会 新町のケヤキ愛護会 中鶴田の大フジ愛護会 姿川第一小のフジ愛護会 赤岩山のヒカゲツツジ愛護会 旭町の大いちょう保存会 鶴田沼の自然を守る会 |
文化財全般 | 宇都宮市文化財ボランティア協議会 |
活動の内容
●無形文化財の育成事業:獅子舞・神楽等の上演や後継者の育成、装束等の保存管理などを行っています
●屋台の保存育成事業:屋台の保存管理、祭等への参加・公開を行っています
●史跡・天然記念物の維持管理事業:史跡や天然記念物および周辺の清掃・除草事業を行っています
●案内・解説事業:文化財めぐりやイベントでの文化財の案内解説、学習活動への支援を行っています
2.小中学校の取り組み
小中学校では、おもに社会科で地域・歴史学習を行うほか、総合的な学習の時間で身近な文化財を取り上げ、 調べ学習を展開する例が多く見られます。このほかに、児 童会・生徒会活動やクラブ活動などで、地域の文化財への奉仕活動、 民俗文化財の観 賞や伝承、文化財保存活動団体との交流を実施する事例もあります。これらの活動には、子どもの頃から地域の歴史や文化財に関わりをもつことで、 郷 土理解・郷土愛を育むという重要な働きがあり、地域に根ざした特色ある学校づくり や、国際理解の基礎的な資質を育てることにも活かすことができるのです。 教育委員会では、「1学校1文化財」をキャッチフレーズに、身近な文化財を取り上げた学習活動、愛護・保存活動などを提唱しています。
活動内容 | 学校名 | |
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小学校の活動事例 | クラブ活動での宗円獅子舞の伝習 | 国本西小 |
桜祭りでの演奏、映画会、子どもお囃子の参加 | 城山西小 | |
天然記念物フジの開花後の施肥、児童会のフジ集会 | 姿川第一小 | |
旭町の大いちょうライトアップ時の絵画出品 | 中央小 | |
中学校の活動事例 | うつのみや遺跡の広場、中鶴田の大フジ清掃活動 | 宮の原中 |
生徒会での塚山古墳群周辺の奉仕活動 | 若松原中 | |
発掘調査体験 | 鬼怒中 | |
小中学校の活動事例 | 瓦塚古墳群の清掃奉仕活動へのボランティア参加 | 豊郷北小、豊郷中 |
英巌寺公園内の清掃作業、史跡についての講話 | 西原小、一条中 | |
宇都宮城址公園での花文字植え、花壇整備 | 中央小、旭中 |
3.行政の取り組み
宇都宮市では、文化財を広く市民のみなさまに周知し、その適正な保存と活用を図るため、各種の文化財調査や文化財の指定のほか、 重要遺跡の整備、表示板(サイン) の設置、文化財マップの作成、学校や生涯学習センターでの歴史講座や文化財めぐり などを行っています。 また、文化財保存活動団体や文化財解説ボランティアの育成、 支援なども進めています。
重要遺跡等の整備 | 宇都宮遺跡の広場、旧篠原家住宅、飛山城址 宇都宮城址公園、瓦塚古墳群整備 |
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調査報告書等作成 | 文化財関係各種調査報告書(埋蔵文化発掘、屋台天棚調査報告書)、文化財年報、文化財要覧 |
各種啓発育成事業 | 文化財表示板の整備、文化財シリーズ・文化財マップの作成、解説ボランティア要請講座、 文化財保存活動費補助金の交付・研修、学校・生涯学習センターへの出前講座、学校移動展 |
関連事業の開催 | 文化財めぐり(年6回)開催、伝統文化フィスティバル開催、 歩け歩け大会・城址まつりへの参加、 遺跡の広場(キスゲ祭、縄文の夕べ、野外映画会、もちつき) |
4.地域・学校・行政の協働での取り組み
生涯学習や学校の総合学習の進展により,地域の歴史や文化財に関する学習活動や ボランティアヘの参加意欲が高まってきています。 近年,この大切な文化財の保護活動に地域が主体的にかかわり,後世に伝えていく 新しい試みが見られるようになってきました。
保護活動の取り組み内容 | 備考 |
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豊郷まほろばの道整備 | 各愛護会、自治会、豊郷地区市民センター |
瓦塚古墳群整備事業 | 愛護会、豊郷中学校、自治会、市民、市 |
塚山古墳群の除草作業 | 愛護会、若松原中学校、所有者、市 |
城山のシダレザクラ さくら祭 | 愛護会、城山西小、PTA、自治会、市民、市 |
5.文化財保護活動 今後の展望
文化財は、その地域の歴史や風土をあらわすシンボルであり1人々の心の支えとしての役割を果たしてきました。 これらの文化財を適正に保存し、活用していくことは、地域住民の郷土理解・郷土愛を醸成し、地域を守り育てる人材を育成することにつながります。 また,文化財を核として人々が集い、協働の活動を営むことで、新たなコミュニティ ーが生まれ、地域活動の活性化、 文化の薫るまちづくりにつながるのではないかと期待 されます。そして、これらのコミュニティーが相互に連携し、将来にわたり、 全市で文 化財保護活動を進めていけるネットワークが形成されることが理想です。
文化財を核にしたコミュニティーと相互ネットワークのイメージ

地域 | 文化財保存活動団体、自治会、子ども会、地区市民センター、地域コミュニティーセンターの活動等 |
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学校 | 教科学習(社会科、生活科、総合学習)、特別活動(児童会・生徒会、クラブ活動) |
行政 | 歴史・文化財の調査,史跡・文化財整備,歴史・文化財関係、情報の提供・支援等 |
文化財保護活動の課題
文化財保護活動は、もともと地縁血縁によって維持されてきたものが多いのが現状です。 したがって、核家族化や少子化、地域の空洞化などにより、従来の活動が継続できなくなる懸念があります。 文化財の種類によって、以下のようなさまざまな課題が指摘されています。 これらを解決していくためには、 文化財保存活動の必要性を広く市民が認識すると ともに、多くの市民のみなさんが活動に参加できるような環境整備が必要であると考えられます。
●文化財保存活動団体の課題 | |
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○全般 | ・会員の高齢化により,活動の維持ができるか心配である。 |
○建造物 | ・生活空間と公開空間の区分けと、見学者のモラルを向上させる必要がある。 ・建造物の修理、修繕に費用がかかる。 |
○民俗有形 | ・組み立て解体技術等の伝承が難しい(後継者の育成) ・祭りへの参加の機会が減少している。 |
○民俗芸能 | ・後継者の育成が難しい。 ・他団体との交流や公開の機会が少ない。 |
○史跡 | ・団体会員が高齢化している。 |
○天然記念物 | ・専門的な知識・技術が必要な部分は、団体の力だけでは補えない。 |
小中学校が参加する場合の課題 | |
・文化財保存活動団体や地域の歴史や風土に詳しい方など,地域の協力が不可欠である。 ・週5日制の導入により,時間的ゆとりが少ない。 ・文化財の見方,扱い方など,職員の知識・技能を高める必要がある。 |